ブックタイトル金沢大学広報誌|アカンサス No.46
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金沢大学広報誌|アカンサス No.46
最先端の医療で人々の健康を支えるAIを駆使して糖尿病性腎症の発症?進展を予防腎臓の機能低下はさまざまな疾患につながるだけでなく,透析療法が必要になると地域?社会と手を携えて患者さんの負担が大きくなります。糖尿病合併症の1つである糖尿病性腎症は透析療法導入の最大の原疾患であり,医学的?社会的?医療経済的課題として対策?認知症?脳血管障害?掻痒感?色素沈着?肺腎症候群が求められています。和田隆志教授は,株式会社東芝および東芝デジタルソリューションズ株式会社と,糖尿病性腎症の重症化メカニズムの解明により精密医療の?心腎連関?動脈硬化?インスリン抵抗性?胃腸障害実現を目指す共同研究を開始。本学が診療や国の研究事業を通して蓄積してきた臨床?病理情報と東芝グループが有する健診情報を東芝のAI(人工知能)を用いて解析し,多様な病態進行や回復状況を層別化することで,リスクや発症機序に応じた最適な予防法を開発します。今後,地域医療機関や自治体などと連携して実証実験を重ね,患者さんの生活の質(QOL)向上に貢献していきます。?腎性貧血?骨粗しょう症腎不全?肝腎症候群腎不全になるとさまざまな症状が出現。生体の恒常性維持の要である腎臓を守ることは全身の健康を保つことにつながる一人一人に寄り添う医療で患者さんに福音をもたらしたい高齢化が進む日本で糖尿病性腎症の精密医療を確立できれば,世界のモデルになると考えています。本共同研究に加え,医薬保健研究域医学系の田嶋敦教授と共にゲノム情報や生活環境情報の統合的な解析を進め,病態進行との関連を調べています。「患者さんが希望を持てる医療を構築したい」。この一心で,患者さんや先達,仲間への感謝を胸に,新たな治療法や発症リスクを予測するバイオマーカーを見いだしていきます。医薬保健研究域医学系和田隆志教授がんゲノム医療を推進し,オーダーメード型がん治療を令和元年9月,本学附属病院は厚生労働省から「がんゲノム医療拠点病院」の1つに指定されました。100種類以上のがん関連遺伝子をがん遺伝子パネル検査で一度に調べ,遺伝子変異に応じた最適な治療を行うがんゲノム医療について,受診のがんゲノム外来がん組織や血液などの病理組織を採取がん遺伝子パネル検査段階から複数の専門家による解析結果の検討,治療法の選択,実際の治療までを一貫して実施できるようになりました。令和2年1月には,がんゲノム医療に特化し,一人一人の体質や病状に合った医療を推進する「がんゲノム医療センター」を設立。院内の他診療科やかかりつけ医などとの密な連携の下,より早く最適な治療法を決保険診療での治療,治験?先進医療?臨床試験について情報提供がん遺伝子パネル検査の結果を説明し,必要に応じて遺伝診療外来で遺伝カウンセリングを実施エキスパートパネルにおいて推奨治療法を議論し,遺伝子解析結果の報告書を作成定できる体制を強化していきます。がんゲノム医療センターにおけるがんゲノム医療の流れ実績と信頼を礎にがん患者さんの思いに応えたいがん遺伝子パネル検査を受けても遺伝子異常が見つからない,あるいは見つかっても治療薬がないという理由で,治療にたどり着く確率は決して高くありません。「がんを克服したい」という患者さんの切実な思いを目の当たりにしてきたからこそ,臓器横断的な特定の遺伝子異常を標的としたがんの分子機構を解明する基礎研究に力を注ぎ,企業治験や臨床試験に結び付けたいと考えています。診療と研究を両輪に,石川県はもちろん北陸地域の一人でも多くの患者さんに治療に巡り合うチャンスを届けていきたいです。(左)矢野聖二附属病院がんゲノム医療センター長(がん進展制御研究所教授/附属病院がんセンター長)(右)竹内伸司附属病院がんゲノム医療センター副センター長(附属病院がんセンター講師)467