ブックタイトル金沢大学広報誌|アカンサス No.46
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金沢大学広報誌|アカンサス No.46
地域資源の活用で地域を豊かにする理工学域能登海洋水産センターほうす本学と石川県鳳珠郡能登町が平成28年7月に締結した「人づくり?海づくり協定」の下,同町の協力を得て,平成31年4月に能登半島のつくも九十九湾沿岸に開設されました。能登地域では,過疎?高齢化の進展,自然環境の変化などによる漁獲量の逓減を背景に,持続可能な水産業の確立が急務となっています。本センターでは,地域の水産業と深く関わる次世代生殖?養殖技術の確立に向けた基礎?応用研究に取り組むとともに,理工学域生命理工学類海洋生物資源コースの教育?研究拠点として新技術?新産業を創出できる人材を育成し,能登地域の活性化につなげます。Pick Up!地の利を生かした研究センター長の思い海洋水産研究の成果を能登地域に還元したい松原創能登海洋水産センター長(理工研究域生命理工学系教授)本センターは,暖流と寒流が交わる能登半島沖の海流の影響を受ける海水,冷涼な井戸水,近隣施設からの清浄な海洋深層水を用いて,淡水から深海までの豊富な水産生物を飼育できる国内屈指の海洋水産研究拠点です。私たちは,地域資源を地域で活用する「地産地活」に軸足を置き,地元の漁業関係者や県?町関係者と対話を重ねる中で思いを共有し,能登地域の水産業発展につながる水産技術の開発に励んでいます。現在,研究環境のさらなる向上のため飼育施設やいけすの充実を図るとともに,国内外から集う学生?研究者が長期滞在しながら研究に打ち込めるよう宿泊棟の整備を進めています。水産資源の活用を海洋水産研究から農業や観光業,教育にも広げ,能登地域全体で好循環を生み出していきたいです。能登地域で水揚げが盛んなトラフグとイカに着目し,「能登ブランド」の付加価値向上を目指しています。●オーガニックなトラフグを開発トラフグの養殖における課題の1つが,寄生虫による大量死への対策です。通常用いられる殺菌効果のある化学物質に代わり,お茶に含まれるカテキンが同様の効果を持つことを発見しました。また,食品由来成分を利用し,卵巣を商品価値の高い精巣に換える技術を開発しています。食の安全確保や環境保全と共に,ブランド化により地域振興に貢献します。●鮮度保持でイカの市場価値を高める全国でも有数のイカ漁獲高を誇る能登町小木港。イカの鮮度を保持したまま出荷できれば,高値での取引につながります。能登海洋深層水に含まれる成分を応用することで,アオリイカやヤリイカが麻酔状態となり,とれたての身色と身質を長時間維持できる技術を開発しました。実際に,市場においても高い評価を得ています。本センターで研究を行う学生の声目の前に海が広がり,実験に用いる魚が手に入りやすいだけでなく,養殖の研究に欠くことのできない奇麗な海水を自由に取水できることが,本センターで研究を行う一番の利点です。先生と一緒に能登地域の伝統的な祭りに参加することもあり,いつも温かく迎えてくれる地域の方々と交流を深められることも魅力の1つです。646