金沢大学新学術創成研究機構の羽澤勝治准教授,小林亜紀子特任助教,ウォング?リチャード教授,ナノマテリアル研究所の雨森翔悟助教,水野元博教授,理工研究域の西山嘉男助教,永谷広久教授,髙橋憲司教授らの共同研究グループは,生命現象の基盤的機構である細胞内相分離を評価できる蛍光プローブの開発に成功しました。
近年,生体高分子が集まることで液滴を形成する現象である相分離(※)は,細胞内でおこるさまざまな生理機能の原動力であることが判明し,相分離の理解に向けた取り組みが世界中で行われています。しかし,相分離を評価するための現行研究ツールは高度な技術?設備を必要とするため,利便性の高い技術基盤整備をすることは急務の課題でした。
本研究では,周囲環境の煩雑性に応じて異なる蛍光を発するピレン化合物の特性を生かした蛍光プローブにより細胞内相分離環境の定量評価法を提案しました。この方法で,細胞内相分離の粘性や極性が細胞の状態に依存して変化することが判明しました。
相分離の形成異常は神経変性疾患やがんなどの難治性疾病の要因であるため,相分離異常を検出するための診断ツール開発に応用されることが期待されます。
本研究成果は,2021年7月15日に『iScience』誌のオンライン版に掲載されました。