金沢大学学際科学実験センターの西山智明助教と立教大学理学部の榊原恵子准教授,広島大学大学院統合生命科学研究科の嶋村正樹准教授らの国際共同研究グループは, 陸上植物の起源を探る比較ゲノム解析において最大の謎となっているツノゴケ類2種3系統のゲノムを解読することに成功しました。
陸上植物は「維管束植物」と「コケ植物」とに分けられ,ツノゴケ類は既にゲノムが公表されているセン類?タイ類と共に維管束植物が分かれる頃に分かれた系統です。しかし,ツノゴケ類はコケ植物としても例外的な性質を多く持つ系統であることから,陸上植物の中で最初に分かれたのか,維管束植物に近いのか,あるいはセン類?タイ類と共にコケ植物として単系統群を形成するのかなどさまざまな議論がなされてきており,陸上植物最初期の進化を考える上で鍵になる系統でした。
本研究グループは,ツノゴケ類の一つであるAnthoceros agrestisについて,染色体スケールの高精度ゲノムアセンブリーを得ました。得られたゲノム上の多数の遺伝子の塩基配列を用いた分子系統解析を行い,ツノゴケ類はセン類?タイ類と共にコケ植物として単系統群を形成することが示されました(図1)。また,分裂組織,気孔,二酸化炭素濃縮機構,シアノバクテリアとの共生などツノゴケ類の形態的?生理的特徴に対応する遺伝子の候補についてゲノム?トランスクリプトームに基づいて解析しました。
ツノゴケ類のゲノム解読に成功したことで,陸上植物のさらなる比較研究や,ツノゴケ類独自の特徴に関する遺伝的基盤の理解が進むことが期待されます。
本研究成果は,2020年3月13日(英国時間)に科学雑誌『Nature Plants』に掲載されました。
図. 陸上植物の系統関係を示した図
研究者情報:西山 智明