ブックタイトル金沢大学広報誌|アカンサス No.42
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金沢大学広報誌|アカンサス No.42
Research strategy goes sky high. -金沢大学研究力の飛翔-ナノ計測学?生命科学?超分子化学?数理計算科学の4分野の研究者が,ナノ計測学を軸に多くの融合研究を展開しています。シグナル伝達分子HGF活性化と制御の動的構造生命科学生命科学ナノ計測学HGF-MET受容体活性化の真のメカニズムを紐解くHGF(肝細胞増殖因子)は,その受容体であるMETと結合することで細胞の増殖や生存を促すタンパク質です。HGFは組織の再生や修復を担う一方,がんの転移にも関与することから,再生医療やがんの診断?治療にも応用されます。松本邦夫教授は,HGFによるMET受容体活性化の真のメカニズムに迫りたいと,高速AFMで生体分子のリアルな動きを捉えてきた柴田幹大准教授と連携。これまでに柴田准教授らは,生命の設計図であるゲノム情報の編集に関わるタンパク質やDNA/RNAの動きを可視化しています。本研究においても,未解明のMET活性化の動的構造が解き明かされつつあります。革新的な発見から新たな創薬?医療へ生体内の小さなタンパク質間に起こる相互作用のダイナミックな姿が明らかになれば,機松本邦夫教授高速AFMの探針走査軌跡HGF HGFみきひろ柴田幹大准教授能と構造変化の本質的な理解をもたらすだけでなく,新たな創薬?医療への道が開けます。高速AFMによって生体内に近い環境で直接かつ動画で観察できるからこそ,これまでの想定を覆すような発見が生まれ,生命科学の進展につながります。その先例となりうる研究として,HGFとMETの動態解明を基盤に,本融合研究を推し進めていきます。METONMET細胞膜HGFによるMET受容体活性化のメカニズムを高速AFMによって観察するイメージオリジナルの探針で挑む3次元空間分布イメージングナノ計測学超分子化学観察対象分子の3次元空間分布イメージング技術の開発淺川雅准教授が開発に携わった3D-AFMは,探針と観察対象の原子や分子との間に働く相互作用をもとに,分子構造の3次元空間分布イメージングを可能とするものです。一方,生越友樹教授が発見した分子であるピラーアレーンは,対称な柱状構造を有するシンプルな環状の分子でありながら,その環の大きさや分子を認識する部位を設計することで,鍵と鍵穴のようにわずかにサイズや形の異なる分子を見分け,選択的に環内部に取り込む能力を持ちます。そこで,3D-AFMの探針に分子認識能力を持つピラーアレーンを付ければ,観察対象分子との間に働く力の変化を3次元空間に描画し,小さな対象分子の3次元空間分布を可視化できるのではないかと着想し,研究を進めています。数理計算科学?生命科学との融合に向けて今後,シミュレーションによる実測データの理解に加え,生命現象の理解のために機能解明が必要となる特定のタンパク質や代謝物を認識する超分子を設計することが求められます。2分野での技術開発に向けた研究を加速させ,数理計算科学や生命科学との融合へと発展させていきます。ひとし淺川雅准教授3D-AFMによる空間観察探針縦方向にも上下させて空間データを取得するおごし生越友樹教授ピラーアレーンの分子認識少しでもサイズ?形が違うと取り込まないピラーアレーンが取り込む分子にのみ反応するオリジナルの探針で観察対象分子の分布を可視化427