ブックタイトル金沢大学広報誌｜アカンサス No.37

概要

金沢大学広報誌｜アカンサス No.37

特集　大学の社会貢献ってどんなこと？企業や自治体などと連携した研究でより良い社会を大学の役割の1つである研究。その成果を地域に還元することで，社会の発展に寄与しています。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ，新たな有権者となった若年層の政治意識や投票率などが注目を集めています。岡田教授は，金沢市選挙管理委員会との連携事業の一環として，さまざまな年齢層を対象に選挙に関するアンケート調査を実施し，若年層の低投票率の理由などを探っています。今後は，その調査結果を分析し，若年層の政治意識や投票率の向上を図るため，選挙啓発や投票環境整備のあり方について提言していく予定です。平成27年2月に石川県珠洲市と連携して自律型自動運転自動車の市街地一般道での走行実験をスタートしました。平成27年10月には実験ルートを当初の10倍以上の60ｋｍ超に延長。実用化に向けて，着実に研究が進められており，「既に目標とする技術の約8割はできている」と，菅沼准教授は語ります。珠洲市では，市内中心部から離れた地区の公共交通が不便でマイカーを手放せない高齢者が多くおり，この研究に期待が集まっています。石川県白山市では休耕地の活用が課題となっていました。佐々木准教授は，白山市や地域の方の協力のもと，石川県産生薬の開発をめざし，薬草栽培試験地として休耕地を活用。平成27年度にはジオウやトウキなどの薬草を栽培して収穫を行いました。収穫されたこれらの薬草の根は医薬品としての活用を念頭に試験研究に使用されます。また，非薬用部位である葉は入浴剤として商品化され，白山市で既に販売が行われています。人間社会研究域法学系／岡田 浩 教授新学術創成研究機構／菅沼 直樹 准教授医薬保健研究域薬学系／佐々木 陽平 准教授若年層有権者を投票へ向かわせるために自動運転自動車で，高齢者に安全な移動を休耕地を活用し，薬草栽培で地域活性化高齢者介護は現代社会における課題の1つですが，公的統計では要介護者を支える家族介護者の実態についての情報は多くありません。寒河江教授は，石川県小松市と連携し，同市の家族介護者の実態を調査。家族介護者の約3割が介護のために離職や転職を経験していることや，その年収が介護開始後平均150万円減少していることなどを明らかにしました。これらの結果は今後，同市の家族介護者への支援策などに生かされていく予定です。北陸地方では，冬季の凍結防止剤散布や海風の影響でコンクリートの寿命が短くなっています。鳥居教授は，コンクリートにフライアッシュ（石炭火力発電所で排出される石炭灰）を混ぜると耐久性が高くなることに着目し，企業と共同でその技術を実用化。既に石川県と福井県の新設橋梁や北陸自動車道の一部で，開発したコンクリートが導入されています。また，平成29年度から始まる北陸新幹線敦賀延伸工事でもその使用が決定しています。中村教授は石川県志賀町の住民を対象に健康づくりの研究を進めています。20年以上の長期間にわたって住民一人一人の健康状態を調査することで，生涯を通じた健康状態を記録し，個人単位で疾病の発生原因や予防方法のデータ分析を行っています。また，平成28年4月には，本学大学院先進予防医学研究科と志賀町が連携協定を締結。今後，同町での健康づくりを推進しながら，個人の特性に応じた保健指導プログラムなどの開発を進めます。人間社会研究域経済学経営学系／寒さがえ河江 雅彦 教授理工研究域環境デザイン学系／鳥居 和之 教授医薬保健研究域医学系／中村 裕之 教授家族介護者支援へ向け，実態調査を実施石炭灰の再利用で，コンクリートを長寿命化住民の健康を追跡調査し，健康づくりを推進アンケートの発送作業を行う研究室の学生ら開発中の自律型自動運転自動車白山市で収穫した薬草の葉が使用されている入浴剤小松市報告会の様子フライアッシュコンクリートが使用された宮坂橋歩道橋（石川県） 関節エコーの検査を受ける住民37 5