金沢大学人間社会研究域学校教育系/子どものこころの発達研究センターの吉村優子准教授,医薬保健研究域医学系の菊知充教授,附属病院の三谷裕介講師,子どものこころの発達研究センターの池田尊司助教と聖路加国際病院小児総合医療センター,秋田大学,北海道大学,日本赤十字社医療センター,東邦大学医療センター大森病院らのグループは,1歳半の幼児の夜間睡眠時間は長時間の昼寝と夜間母乳授乳で短くなるが,養育者との添い寝には影響されないことを明らかにしました。
本研究では,睡眠パターンの基礎が形成される1歳半の幼児を対象に,夜の睡眠に対する添い寝と夜間母乳授乳の影響を調べました。健康な幼児106名にアクチグラフ(睡眠計)を1週間継続して装着し解析を行ったところ,幼児の夜間睡眠時間の長さは夜間母乳授乳で短くなる一方で,添い寝は影響しませんでした。これまでも夜間睡眠時に夜間母乳授乳や,アジア諸国を中心に多くみられる“添い寝”を行うと幼児の夜間睡眠が妨げられる可能性が指摘されていましたが,ほとんどの研究がアンケート調査によるものでした。一方,今回の研究では睡眠計により“添い寝”が幼児の夜間睡眠を必ずしも妨げるものではないことを客観的に確認しました。また長い昼寝も夜間睡眠時間を短くすることも確認されました。
本研究の結果,子育て中の養育者に対して母乳の与え方や昼寝の長さを調節するようアドバイスすることにより,幼児の夜の睡眠不足が解消できる可能性およびそれに伴う養育者の不安や睡眠不足を解消できる可能性が明らかになりました。今回の知見は,こどもの睡眠について悩む養育者の子育てをサポートするのに有用と考えられます。
本研究成果は,2021 年 2月 4日 10 時(英国時間)に英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。
研究者情報:吉村 優子