ユバスキュラ大学
2023年度 ヨーロッパ〈フィンランド〉
Y. S.(人間社会学域 学校教育学類 4年)
留学前
2023年9月から2024年5月末までの9か月間フィンランドのユバスキュラ大学に留学しました。自分の場合は入学時からコロナウイルスの影響でいろいろな制限があったことから在学中の留学は不可能だと考えていて、準備が遅れてしまい、出発は4年次になりました。しかし、今となっては出発が遅くなって結果的に良かったと感じています。まずは出発までにゆっくり準備できたことが挙げられます。語学力はもちろん、出国までの大学生活で様々な経験を経てたくさんの人と出会い、いろいろな視点を得た上での留学だったからこそ得られたものもたくさんありました。また、先輩や同級生など自分の周りに留学を経験した人が多く、たくさん相談に乗ってもらえたことも出発が遅くて良かったことだと感じています。一方、早い段階で留学に行けば帰国してからの人生により早く影響を及ぼすことが出来るので、出発時期に関しては周りが行くからと流されるのではなく、早く海外を経験したい、ある程度自信を持った状態で臨みたいなどの明確な目標を持って自分で決めていただきたいです。
留学中
現地での体験で特に印象に残っているのはTeaching Practice for Exchange Studentsという授業で学期を通して行った大学附属の小学校での授業見学と授業実践です。いわゆる教育実習のようなものですが、自分はフィンランド語が話せない上に相手は小学生で満足に英語も話せなかったのでコミュニケーションを取るのに苦労しました。しかし、交流を重ねるうちに児童も心を開いてくれてShuhei!と呼んでくれるようになり、楽しく学ぶことが出来ました。
授業外の時間は友人と自国の料理を作ってそれらを持ち寄ってInternational Dinnerと題したパーティーをしたり、寮にあったジムやサウナに行ったり、人を集めてサッカーやバスケットボールをしたり、ビーチに行ってバレーボールをしたりゆっくり話したりしていました。フィンランドはどこに行っても綺麗な湖と森があるので自然を楽しむには最高の国でした。また、いろいろなことに挑戦しようと思い、様々なボランティア活動にも積極的に参加しました。数々のイベントの運営や近隣の中学校での日本文化ワークショップ、今後使われる日本語教材の作成に携わらせてもらえたりもして、いろいろな人と積極的に関わり挑戦したことで本当にいろいろな体験が出来ました。
留学を終えて
留学を経て、大きく分けると3つの成長がありました。まず1つ目が、ストレス耐性がついたことです。文化や宗教が違えば制度や常識、それに付随する考え方も大きく異なってきます。日本から比較的近いアジア諸国でもたくさんの違いがあるのに、ヨーロッパとの違いは大きすぎました。理解したつもりになってもいろいろな国から来た人がいるので考え方も多種多様になり、自分の中では、しないことが常識だったことを平気でする人がいたり、自分とは真逆の考え方、行動をする人がいたりと、日常の至るところに違いが溢れていました。いちいち気にしていられないので、郷に入っては郷に従えということで相手の意見を尊重して適応すべき部分は自分が適応し、逆に自分の意見をはっきりと持つべきだと感じたときはそれを貫くというような自分の中の軸が明確になったように感じました。それに関連して、何もかもが自分の思い通りにいくわけがない、他者の意見を尊重し理解する姿勢が必要、まずやってみる、そしてめげずに続けてみようというような心持ちになりました。たくさんの困難を乗り越えたことで何があってもほぼストレスを感じなくなりました。
2つ目が語学力の向上です。フィンランド語とスウェーデン語が公用語でしたが、それらを話せる留学生は極めて少なく、大半の留学生が英語を日常的に使っていました。トラブルがあっても母語である日本語ではなく英語、友達と遊ぶときや連絡を取るときも英語、授業の話し合い、グループワーク、課題、教授とのメールのやり取りも全て英語だったおかげで、英語力が大きく向上しました。また、友人が話しているから、自分が現在住んでいる国の公用語だからという理由でモチベーションが湧いてスペイン語やフランス語、フィンランド語を楽しく学ぶこともできました。また、先述したストレス耐性にも関わってくるのですが、自分と同じように英語を第二言語として話す留学生が多いため、スペイン語やフランス語、フィンランド語など、様々な母語から影響を受けた訛った英語を聞く機会が多かったです。日本で英語を勉強しているときに耳にしたのはアメリカ英語か日本語訛りの英語ばかりで聞き馴染みのない訛りの英語が多く、聞き取るのに苦労することも多かったのですが、結局は伝えよう、理解しようというお互いの気持ちが大事で、語学力以前のコミュニケーションに関わる大切な要素を、身をもって学ぶことが出来たと思います。加えてそのような様々な種類の訛りの英語に包まれながらも9か月間も生活できたということが大きな自信にもなりました。
3つ目は価値観が広がったことです。言語も文化も一つ一つに違いがあって、言語が違えば人々の考え方も変わってくるし世界の見え方が変わります。今までに学んできた英語をたくさん使ったことで日本語との考え方の違いも一層理解できましたし、他の言語を学んだことで類似点や相違点、各言語に固有の概念があることも理解できました。また、上述したように同じ英語でも母語によっていろいろな訛りがあって、日本語でも地域によって方言というものが存在します。同じ言語を使っていても様々なものの捉え方、考え方があるのでいろいろな人と触れ合うことで様々な観点を得られました。日本を離れてみて自分の中の当たり前が崩壊し、日本に無い海外の良さや逆に日本の良さを再発見出来たりもしました。物事をいろいろな視点からみられるようになって文字通り自分の価値観が広がったと実感しております。
このように大きく成長を遂げることが出来て、そのきっかけとなった様々な経験は自分にとってかけがえのない宝物となりました。これらは自分が将来教壇に立つ際に大きく役に立つと確信しています。自分の経験談も踏まえ、より多くの子どもたちに国際理解、そして自分の可能性を広げる経験を積み、学ぶことの楽しさを伝えていきたいと考えております。本留学を通して教員になりたいという思いがさらに強くなりました。卒業後は地元の小学校で教員として働けることになりましたので、今後も学び続けて良い教員になれるように努めます。
最後に
本当に語り尽くせないほどの素晴らしい体験ができました。滞在先でどんな生活をして何を成し遂げるか、そしてそれを踏まえて帰国してからはこれから留学に行く皆さん次第だと思います。是非行きたい国で学び、多くの人に会っていろいろな経験をしてきてください。きっと素晴らしい時間があなたの人生をより良いものにしてくれることでしょう。