アールト大学
2022年度 ヨーロッパ〈フィンランド〉
H.M.(医薬保健学総合研究科創薬科学専攻 1年)
高校時代は、地元自治体主催のアメリカ訪問に参加し、スペインにも短期留学しました。この経験からヨーロッパの文化に興味を持ち、さらに経験を深めたいと思い、海外で、特にヨーロッパで長期で生活したいと思っていました。
私の家族は北欧のデザインが好きで、両親は数年前にフィンランドとノルウェーに旅行したことがあり、また母の友人はノルウェーに住んでいて、北欧の話をよく聞きました。フィンランドは、北欧デザインやサウナ、ムーミンなどの文化に加えて、ジェンダー平等、環境問題への取り組み、幸福度などでも注目されており興味深い国でした。
フィンランド生活について
Aalto大学のあるエスポ―市はヘルシンキの隣の位置したフィンランド第二の都市です。キャンパス内に地下鉄の駅があり、そこからヘルシンキ中心部の駅まで15~20分で行けるというヘルシンキ中心部に近い便利な立地です。キャンパス内にあるアパートで、キッチンやバスルームを3人でシェアしながら生活していました。
環境問題への取り組みについて着目してみると、ごみの分別は生ごみやボード紙(厚紙)など、分別区分が多かったですが、指定のごみの日がなく、好きなタイミングでアパート前のごみ捨て場に持っていけばいいというルールだったため、ごみの分別がしやすかったです。ペットボトルや空き缶はお店に返却すると一本20セントほど返金されるシステムで、食品の包装などプラスチック製品が少ない印象でした。一方で、メーデーの時期(VAPPU)は空き缶などのごみが路上に捨てられるなどの問題もあり、日本にいる時よりもよく見かけたヴィーガン製品も詳しく調べると本当に健康や環境にいいのか疑問が大きくなりました。全体としては、ごみの分別など、無理なく環境に良い行動を選択しやすいと感じました。
3月にはフィンランドの国政選挙があり、選挙ポスターがあちこちに貼られ、ショッピングモール前の広場では政党ごとのテントが張られ、質問等を受けつけており選挙の雰囲気を少し経験できました。ポスターを見ていて思ったのは女性の候補者が多く、年齢も日本の政治家と比べて若い印象でした。女性が多いと言っても、約50%で男性より圧倒的に多いわけではなく、日本の政治家に女性が少ないのだと実感しました。サンナマリン元首相が近くのショッピングモールに来た時に、足を運び写真撮影をお願いしたことも良い思い出です。
同時期に、政治の話題になり、日本の政治について聞かれたときに、若者は選挙に行かないと答えたら、Why?と聞かれました。行かない理由は何となく予想できそれを答えたのですが、私自身には行かない理由がないため私もWhy?と思っていました。選挙に行くのが当然と思う人が多くいる環境を経験し、日本もそうなってほしいと感じました。
冬は暗い反面、近所でオーロラが見れたことが数回ほどあったり、雪景色などを楽しんだりできました。夏至の期間は日が長く、木には葉が生い茂り、花が咲き、暖かくて心地よい時期でした。ヘルシンキやエスポ―は首都圏とは思えないほどに渡り鳥やカモメなどの鳥が多く、植物や海、湖が至る所にあり自然が豊かでした。
また、長期休暇にはヨーロッパの他の国々に旅行し、パリのルーブル美術館をはじめとする美術館を訪れるなど、ヨーロッパの文化や歴史に触れました。
大学生活について
金沢大学では創薬科学専攻に所属していますが、Aalto大学には薬学部がなく、有機化学を専門としていることからSchool of Chemical Engineering(化学工学部)に所属していました。
フィンランドの大学は学士課程3年で卒業することができ、修士課程に進学することが日本よりも一般的であり、授業内容やカリキュラムからしても、フィンランドの修士課程は日本の大学の学士課程と修士課程の中間的な存在だと感じました。また、講義を受けていると、学部生と大学院生の両方が履修していることもありました。
フィンランドを代表する建築家アルヴァ?アアルトの名前を大学に使っていることもあり、キャンパスにはアアルトの設計した建物や家具がありました。また、建築?デザイン系の専攻が人気の大学ということもあり、キャンパス内では作品展やハンドメイド雑貨の販売イベントがよく開催されていまました。
学生も世界各地からの留学生はもちろん、配偶者や子供のいる方、以前は別の専攻を学んでいて大学に入り直した方など多様でした。
大学院生でもイベントやサークル活動に参加する頃が多くNippoliと呼ばれる、日本人学生と日本に興味のある学生の交流の場となるサークルにも参加しました。日本に興味のある学生が多く、アニメなどよく知らなかった日本のことを知り、イベントではフィンランド人学生と交流して、フィンランド料理を食べるなどして、フィンランド生活について知るよいきっかけとなりました。
専門とする有機化学のほかに、Bio product系の授業も履修しました。物理や数学が絡む内容もいくつかありましたが、長らく勉強していなかったこともあり、それらが絡んだ内容や、専門と離れた内容は英語に加えて内容自体にも苦戦しました。
有機化学では、グループワークで積極的に意見を出すなどして好成績を修めることができました。有機化学でもこれまで深く学んだことがなかった内容も学ぶことができ、日本人の有機化学者の名前が講義に出てきたときは嬉しく思いました。
Bio Productの授業では、自分の知らない分野で苦労した半面、環境問題と関連する点も多く、プレゼンテーションの準備をする中で化学繊維による環境への影響を知ることができました。留学生も多く、講義の内容からしても環境先進国フィンランドらしいと感じました。
今回の、留学は初めての海外生活で自分にはどちらが合うのかを知る時間でもありました。寒くて暗い冬などよいところばかりではないですが、フィンランドの環境が好きでまた住みたいと感じます。フィンランドで生活するには、英語もフィンランド語もまだまだ勉強しないといけないと感じます。帰国後は、英語の勉強もしつつ、日本で就職活動をしています。日本で何年か働いた後に、ワーキングホリデーを利用するか、博士課程進学をして、またフィンランドに住むことが私の将来の目標です。