フィレンツェ大学
2022年度 ヨーロッパ〈イタリア〉
S.M.(人間社会環境研究科 2年)
今回私が派遣留学先として赴いた場所は、イタリアの旧首都にして、ルネッサンスの中心地、フィレンツェでした。期間は3か月半。夏の終わりから、クリスマスまでを体験してきました。コロナ禍がひと段落し、海外留学が解禁された後の恐らく第一陣であったと思います。博士課程前期中に1年は行きたかったのですが、修了時期もあり少し短めの留学になってしまいましたが、非常に貴重な体験を享受することが出来たかと思います。
正直な話、最初から最後まで試練の連続でした。出発前においては、特に宿探しとビザの申請に一番エネルギーを費やしたように思います。書き出すとキリがないので、結論だけ。宿は大学が紹介してくれるものに早めに申し込みする事をお勧めします。その後、現地で希望の部屋を探すのも手です。特に、現地での滞在先は、ビザ申請の時に必須なうえに、なかなか決まらないと、焦ります。大使館や総領事館のビザ申請窓口は、おおよそ予約制で、一か月先まで常に空きがありません。さらに、申請受付は、出発日の90日前からという制限が付いています。ギリギリでも書類等にミスなく通れば、スムーズに受け取れますが、もしあった場合、窓口予約からやり直しです。宿探しで手間取ると、ビザ申請での余裕が削られていきます。特に、イタリアは郵送申請不可の為、東京か大阪に直接赴かなければなりません。私の前に手続していた、福岡から飛行機で来たと話していた方は、書類に不備があり、泣きながら地元に帰っていきました。絶望ですね。
現地に到着すると、すぐさま数多の問題が出迎えてきました。まず判明したのは、朝食付きと書いてあった為に、契約した寮にそれが付いていない。そして、その分安くなる等も無し。さらに一番の問題は、フィレンツェ大学で、授業登録が出来なかった事です。原因は、この大学の留学生受け入れ期間に、試験期間が含まれていない事でした。よって、授業は自由参加になり、単位ももらえません。この結論を得る為に、到着直後から、現地の留学生事務等の関係各所に連絡を取り、原因を究明する必要がありました。時間も無駄に取られたので、その期間がもったいなかったですね。そして、留学の初っ端から、外国語運用能力を試されるのが、精神的に辛かった部分です。因みにですが、留学受け入れ期間が終了した場合、速やかに帰国しなければならないので、延長滞在して試験を受けるという方策は取ることが出来ません。なので、フィレンツェ大学に留学する際は、単位に十分余裕をもって留学する事をお勧めします。その他のトラブルは、文字数的に書ききれないので割愛させて下さい。取り敢えず、沢山あったと言うに留めます。
とはいえ今回の留学目的は、トラブル解決ではなく、自身の研究を進める事にあったので、その意味では、成功と言える体験でした。掘り出し物の古本達、日本で出版されていない最新の研究資料との出会い、現地の最前線で活躍する優秀な研究者達との交流など、かなり有益な時間だったかなと思います。また、歴史的建造物や博物館がごまんと在る都市なので、ガイドツアーが豊富なのが良いですね。
卒業後は、そのまま金沢大学大学院の博士課程後期への入学が決まっているので、この留学で得た知識や体験、史料などを自身の同大学での研究活動に還元していくつもりです。
振り返ってみると、ふつふつと怒りが込み上げてくる体験が多かった気がしますが、遠い異国の地でそれを乗り越えた自分に、少し自信がついたように思います。あとは、困難な状況というのは、意外と何とかなるものだなと、思考が前向きになったかもしれません。この留学体験は、確実に自身の成長につながったと感じます。
これから留学を志している皆さんに私から言えるのは、「そこは外国なのだ」という事です。当たり前の事ですが、遊園地でもなければ、レジャー施設でもありません。そこであなたはただ一人の外国人です。適度な緊張感と警戒心を持って楽しんで下さい。